アクロス・こども文化芸術体験

「好き」や「自分らしさ」を見つけよう!
実施の背景

里親同士の交流の場
九州大学大学院 芸術工学研究院 ストラテジックデザイン部門 准教授
社会福祉士 田北 雅裕 さん
福岡市はこの20年ほどで里親委託率が全国上位に。里親家庭の募集を呼びかける一方で、悩みを抱える里親が孤立せず、つながりを見いだせる場の必要性が高まっています。こうした背景のもと開催された今回の文化芸術体験です。里親さんや子ども同士だけでなく、ボランティアとして参加する地域の人々との交流も重要なポイントです。さらに、本事業を福岡の文化芸術を支え続けているアクロス福岡がリードすることは、地域の福祉にとって大きな意義があると言えます。
文化芸術体験での出会いは特別なつながり
文化や体験を通じた自然なつながりは、他では得られない貴重な体験となり得ます。里親さん同士が「交流しましょう」と構えるのではなく、文化芸術を媒介にして出会いが生まれる。それが里親さんにとっても大きな励みになり、ただ出会うだけでは得られない深い関係が生まれます。
コンサートでは最初、ステージを見つめる子どもたちは緊張した様子でしたが、時間が進むにつれて反応が良くなり、マットに寝転がったりリズムにのったり、隣の子と話したりして、自由に楽しそうに過ごしていました。とても貴重な体験になったと思います。また、演奏者の皆さんが子どもたちとの距離を自然に縮めているのが印象的でした。一期一会の人々をこうしてうまく一つにできるのは、まさしくプロの演者ならではの力。アクロス福岡がこれまで育んできた人と人つながりが、今回の場を生みだしたのだと感じました。(田北さん)



本事業について
新しい出会いが人を成長させる
令和4年度から本事業がスタートして、今回で4回目です。「さまざまな事情を抱える子どもたちが、文化芸術の魅力を知るきっかけをつくれたら」という思いから始まりました。好きなことが見つかれば、自分らしくいられる時間が増え、自己肯定感を高めることにつながります。そのために、私たちが提供できる多様な文化芸術コンテンツを通して、里親さんたちや子どもたちの心に働きかけたいと考えました。
コンテンツは、1つに絞るよりも子どもが自分で選べるように。子どもたちに自分の「好き」を見つけてほしかったからです。ワイワイと楽しむ場もあれば、黙々と集中できる場もある。タイプの異なる体験ができるよう工夫しました。振り返ると、本当にたくさんの出会いと発見がありました。子どもたちが文化芸術に触れて、夢中になれる何かを見つけることで、誰かとの新しい出会いが生まれる。その一連の体験が子どもたちを次のステップへと導き、成長していく姿をたくさん目の当たりにできてうれしく思っています。


あたたかな雰囲気をつくるボランティアさんの存在
体験の場には、特にボランティアの方々の存在が欠かせません。ボランティアさんとの体験の中で自然にコミュニケーションが生まれ、音楽や文化に触れ、子どもたちの思い出となっていく。この積み重ねの大切さを強く感じます。毎年、参加ボランティアさんを対象にアンケートを取ります。その内容を還元しながら本事業を実施していると、皆さんそれぞれが「想い」を重ねてきたことがわかりますし、皆さんが少しずつ進化する姿にも直面します。会場のアットホームでやさしい雰囲気は、ボランティアのみなさんの寄り添い方がとても素敵があってこそ。子どもたちは毎回、安心して好きなことに夢中に取り組んでいます。



参加者の声
去年楽しかったから今回も参加しました。前回会った里親さんや子どもたちとの再会も、参加の楽しみのひとつになっています。
子どもが自分自身でしたいことを見つけるのが重要。こうして親子が一緒に体験できる場や機会がもっとあったらいいなと思いました。
時間を気にせず落ち着いて参加出来ました。いつでも自由に参加できるコーナーがあり良かったです。
無表情で楽しくなさそうにしていたお兄ちゃんも後で楽しかった事を教えてくれました。
面白い内容ばかりであっという間でした!ありがとうございました。
今回も大満足、遊び疲れてくたくたで帰宅しました。色々な工夫があり、どれもとても楽しかったです。和菓子体験は説明がちょっと長いかな?聞けるかな?と少し心配になりましたが、小さい子たちも先生の手元に釘付けになり、しっかり最後まで聞くことができていて良い経験をさせて頂けたと思います。1点だけ今後の参考にお願いしたいことがあります。においに敏感な子供がおり、張子の糊?和紙の匂いがきつかったという声がありました。もしかしたら、他の体験と会場が分かれていたらよかったのかも?と思いました。里親子にとってリフレッシュできる素敵な1日をありがとうございました。毎年思う事ですが、ボランティアさんたちの子供への接し方が温かく、安心してお願い出来ました。
ボランティアの声
和菓子体験に参加しました。子供たちの真剣な表情と創作力に驚きました。男の子がお母さんを思いながらの優しい色合いと仕上がりに心が温かくなりました。子供達や里親さんの目には見えない思いを感じました。
途中で諦める子供さんは一人もおらず、皆思い思いの制作を最後まで仕上げていて良かったです。
みんなのびのびと過ごしているように見えました。
スイッチが入った時のパッと明るくなる瞬間、たくさん心を動かしていろんな気持ちを感じながら過ごしてほしいなとお子さんたちの表情を見ながら私も心から願いました。少し離れた所で見守りながら素敵な色だなあって他のボランティアさんとお話していたんです。お子さんが振り返ってこっちを見てニコッとしてくれました。大きな声で話していなくて真横にいらっしゃる方が聞こえるくらいの声で1mくらいは離れていたと思うのですがよく聞いているんだなって今回は良いお話だったけれど逆のような話だと思うと大人として一人の人として言葉には気を付けようと思いました。
和菓子作りに参加させて頂きましたが皆楽しそうに作っていたと思います。色々な体験を通じて幅が広がっていくと思うのでいいきっかけになっていると思いました。
アクロスさんでのお取り組みがモデル事業のようになっていろんな自治体に広まるといいなと思います。今年もお世話になりました。ありがとうございます。
戸惑いながらも和菓子作りが始まると目がキラキラしてきて楽しそうに見えた。呑み込みが早いのに驚きを感じ話しかけると素直に聞いてくれて作品に集中して完成を喜んでいた。子供にはいろいろな才能があると改めて思った。
今日参加させて頂きボランティアの方々の出会いと交流にも感謝しています。また機会がありましたら参加させて頂きます。
和菓子作りのお手伝いをさせて頂きました。表情がいきいきとして「お母さんに見せてあげる!」など積極的な発言が見られこちらも心が温かくなりました。
実際に里親をされている(同じ世代)方と直接色々な話が聞けてとても良い1日でした。
他のボランティアの方々とも話す機会ができ、楽しかったです。
とても良い取り組みだと改めて思いました。今後も続いて欲しいと思います。




今後の展開について
時間と体験の連続が「循環」に変わる
ありがたいことに、年々参加者が増えてイベントが成長しています。参加した里親さんや子どもたちが「今年も来たい」と口コミで広めてくれ、今回は88名の里親家族が参加してくださいました。一度体験しただけで終わらず、来年、再来年と体験を重ねる中で、子ども自身が新たな発見をしたり、「自分はこんなことがしたい」と感じたりする。そうした時間と体験の連続が大切なのだと思います。様ざまな理由で文化に触れる機会の少ない子どもたちに寄り添う事業を展開していきます。(アクロス福岡 担当者)
文化芸術の場が地域との接点に
自治体との連携を考えると、福祉と文化はセクションが違い、縦割りの制度や慣習もあって関わり方は簡単ではないかもしれません。しかし、今回のように一緒に企画してみることで発見や前進につながる可能性もあり、文化体験やボランティアの体験をきっかけに里親制度に関心を持つ人が増えることも期待できます。まず気軽に、そして全員がフラットな関係で体験を共有することで、単なるイベント参加以上のつながりが生まれる。レスパイト・ケアの視点からも、こうした文化交流の場はとても大切だと感じます。(田北さん)
総括
令和4年度に始動した本事業は、困難を抱える子どもたちが文化芸術を通じて「自分らしくいられる時間」を見つけることを目指し、里親家庭の声を反映しながら歩んできました。
4回目を迎えた今回は、特別な集客を行わずとも口コミや里親支援センター経由で定員を上回る応募があり、事業の浸透を肌で感じております。アドバイザーの田北先生や協力者の皆様からは、「安心・安全で魅力的な場として信頼を得た結果」との評価をいただき、アクロスらしさを追求しつつ対象者に寄り添ってきた自負が確信へと変わりました。
また「繋ぎ手」としての大きな成果として、初回から参加されていたボランティアのご夫婦が、実際に里親になられました。文化芸術体験を通じて自然な形で里親子と触れ合える場を提供できたことは、当館ならではの社会貢献の形と言えます。
里子たちにとって、一つひとつの経験はかけがえのない心の糧です。本事業は安定期に入ったため、今後は「繋ぎ手」として他施設や自治体との共同開催も視野に入れ、将来的には連携先が主体となってこの輪がさらに広がる形を目指してまいります。
概要
実施内容
里親家庭を対象に令和4年度から事業を開始。様々な事情を抱える子どもたちが文化芸術に触れ、魅力を知ってもらう体験型イベントとして、多様な体験型コンテンツを用意しました。子どもたちが「好き」や「自分らしさ」に出会う機会や場の創出だけでなく、意識や行動の変化などの「循環」を目指しています。
日程
2025年7月26日(土) 11:00~16:00
会場
アクロス福岡 交流ギャラリー(2階)、円形ホール(1階)
舞台体験
出演|アートムジカ&アンサンブルケフェウス(ピアノ:田中美江 ソプラノ:小野 弥生 画家:保坂真紀 フルート:永田明 パーカッション:関家真一郎 コントラバス:谷口正美)
アートムジカによるコンサート&ライブペイントが一度で鑑賞できるユニークなコンサート。動物の謝肉祭の曲に乗せて、カーニバルに登場する動物たちを描きました。
伝統工芸・アート・伝統文化体験
- 博多張子 お面の絵つけ体験 ■講師|博多張子職人 三浦智子
- オリジナルの和菓子づくり ■講師|和菓子舗 鮹松月 松尾和明、NPO百千鳥
- 野菜スタンプで作るバッグ作り ■講師|kano
- 名人から教わるルービックキューブ体験 ■講師|どすこい安部(春日ジャグリングクラブ副代表)
- お手玉体験 ■講師|福岡県レクレーション協会、福岡お手玉の会
- アドボ!?とあそぼ ~きもちを表すワークショップ~
協力
福岡県域里親支援センター、福岡市里親支援センター「ブルームウェル」、福岡県里親会、福岡市里親会(つくしんぼ会)、NPO法人SOS子どもの村JAPAN、(一社)ふくおかフォスターサポートセンター、NPO法人子どもアドボカシーセンター福岡、NPO法人子どもNPOセンター福岡、九州大学田北雅裕研究室